訪問看護の仕事

地域の医療機関・主治医や各職種と連携をとり、心身の状態に応じてご自宅での療養生活を看護師としてお手伝いする仕事です。

健康状態の観察・アセスメント

バイタルサインの確認、体重測定、食事・排泄・睡眠の状況確認、皮膚状態の観察など

「先週と変わったところはないかな?」、「つらい症状はないかな?」、「普段通りの生活が送れているかな?」といった視点を持ち、異常の早期発見・早期対応に努めています。
一人でアセスメントし判断することに不安を感じた時には、上司や同僚にその場で電話相談することもあります。また事業所内でケースの振り返りや意見交換を行う等、お互いに支え合っていく風土があるので、訪問看護経験のない方も安心です。

日常生活の援助

清潔ケア、排泄ケア、栄養管理、睡眠の支援、褥瘡予防など

病院と違い、在宅では利用者さまの生活環境も様々です。寝るのはベッドか布団か? 食事はどこで摂る? 調理は誰が? など。利用者さまの暮らし方を尊重しつつどうすれば安全・安楽が保てるかを意識して、入浴介助や清拭・足浴、浣腸・摘便、オムツ交換、褥瘡予防などのケアを行っています。
マニュアル通りに行かないことも多いですが、家にある物を利用し、経済面にも配慮しながらより良い方法を試行錯誤するのも、訪問看護のやりがいのひとつです。
入浴の介助は体力的にもちょっと大変ですが、利用者さまの「やっぱりお風呂は気持ちいい。ありがとうね」の言葉に、疲れはあっという間に飛んでいきます。

服薬管理

内服薬の管理、外用薬の塗布・貼付など

薬の飲み忘れや間違いがないように、服薬カレンダーへ1週間分セットしたり、残薬の確認をしたりしています。例えば「朝は飲めるが夜は飲み忘れが多い」といった場合には、服薬のタイミングを朝にまとめられないかを医師や薬剤師に相談することもあります。
また、医師の包括的指示に基づき下剤の量を調整したり、頓服薬を飲むタイミングをアドバイスしたりしています。病院のように看護師が常にそばにいないので、「熱が出た時にはこの薬を飲む」、「食事がとれない時はこの薬は飲まない」など利用者さまが判断できるように工夫しています。

医療機器・医療的ケアの管理支援

医療機器の管理・指導、医師の指示に基づく医療処置など

在宅酸素や経管栄養、中心静脈栄養、膀胱留置カテーテル、ストーマ、インスリン自己注射など、日常的に医療的ケアが必要な方も増えており、これらを安全に行えるように支援しています。
毎日のケアをすべて訪問看護で行うことは難しいので、利用者さまやご家族が自信をもって自己管理できるように、手技の確認や支援を行っています。
人工呼吸器の管理などは、スタッフも自信をもって管理できるよう、外部研修に参加したり、企業の方に勉強会を開催してもらい、取扱方法や注意点などを再確認する機会も設けています。

リハビリテーション

関節可動域訓練、歩行訓練、筋力維持、呼吸リハビリ、摂食嚥下訓練など

「トイレに自分で行きたい」、「台所に立ちたい」、「口から食べたい」など、利用者さまの思いに合わせて目標を設定し、一緒に体操をしたり、家の手すりや階段を使った運動、ベッド上でのROM訓練など、ADLや生活環境に合わせたリハビリを行っています。
洗濯物をたたむ、服のボタンをかけるなど、日常生活でもリハビリの要素を取り入れる工夫をしています。
「一年前は立つのもやっとだったのに、今は庭に出られるようになった!」とイキイキした利用者さまの姿が見られ、長く関わることも多い訪問看護ならではの達成感があります。

家族支援・介護相談

家族への指導、相談、助言など

訪問看護では、利用者さまのことだけでなく、ご家族の健康状態はどうかな?無理しすぎていないかな?ストレスに感じていないかな?と気にかけています。
もしご家族に介護疲れがみられたら、まずはゆっくりお話を聞き、少しでも負担を減らせる工夫を考えます。ケアマネジャーと連携して、ショートステイの利用やヘルパーの導入などを提案することもあります。
仕事や別居などでご家族と直接お会いできない場合には、連絡ノートやメールで情報共有しています。

終末期の看護

在宅看取りの支援、意思決定支援、家族支援など

「家で最期まで過ごしたい」という利用者さまも増えており、それを支えるのも訪問看護の醍醐味です。
痛みがあれば、主治医と連携して鎮痛薬を調整したり、時間をとって利用者さまの思いを聞いたり、足浴やマッサージでリラクゼーションをはかったりと、少しでも苦痛を和らげ穏やかに過ごせる方法を考えています。
大好きなお酒を飲みたい、ペットと一緒に過ごしたい、妻の手料理を食べたい… 利用者さまが「今をどう過ごしたいか」を確認しながら、最期まで自分らしく生きることを支援しています。
在宅看取りはご家族の不安や負担も大きいので、寄り添い支えています。グリーフケアにも取り組んでいます。

認知症の方の看護

体調管理、生活支援、家族支援など

認知症の程度に合わせて、日常生活の支援や服薬管理、安全な環境づくりなどをしています。
症状をうまく伝えられないこともあるので、健康状態の観察はより念入りに行っています。食事の確認は、台所に置いてある食材や食べ終えた食器などを見て推測することもあります。
最近は独居の方も多く、利用者さまのペースにあわせ、できるだけ「自分で」できるようサポートしています。
ご家族には、声のかけ方や接し方などのアドバイスを行い、少しでも介護負担・精神的ストレスが軽減できるように努めています。

精神障がい者の看護

体調管理、生活支援、服薬支援など

症状に合わせて、生活リズムを整え在宅生活が維持できるよう、清潔・排泄ケアやリハビリなどを行っています。服薬管理は、飲むタイミングや管理の方法を一緒に考えます。過剰内服するリスクがある利用者さまの場合には、残薬はあえて取り出しにくい場所に保管する等の工夫もしています。
「話をきいてほしい」という思いには、ただ話を聞くことに徹することもあります。
通院やデイケアが継続できるよう、主治医や他職種とも連携して支援しています。利用者さまが言いづらいことを主治医に伝えることも、訪問看護の役割のひとつです。

小児の看護

体調管理、生活支援、医療機器の管理、医療的ケアなど

医療的ケアが必要な小児の在宅生活を支援しています。
具体的には、人工呼吸器や気管切開などでお風呂に入れるのが難しい児の入浴介助や、体位ドレナージや呼吸手技・吸引による排痰ケア、排便コントロール、人工呼吸器や在宅酸素等の機器類の動作確認、発達段階に応じたリハビリなどを行っています。
またご家族の心理的なサポートを行います。レスパイト目的で長時間訪問を行うこともあります。
子どもの笑顔に癒されたり、成長をご家族と一緒に感じて喜んだりと、やりがいのある仕事です。

社会資源・在宅サービスの利用調整

各サービスの紹介・提案、関係職種への相談・調整など

利用者さまの身体状態や環境の変化に合わせて、他の在宅サービスを提案したり検討することもあります。
例えば、訪問看護で入浴介助を行っている利用者さまのADLが低下して、転倒リスクが高くなった場合には、浴室に手すりを付けられないか、訪問入浴の導入はどうかと、ケアマネジャーに提案します。ADLが改善し、看護師ではなくヘルパーの介助でも安全に入浴できそうであれば、引継ぎを行っていきます。
地域にある社会資源について、学んでおくことも大切になります。

多職種連携

主治医への報告相談、他職種との連絡調整・情報共有など

訪問看護は、様々な医療機関・主治医と連携しており、タイムリーな報連相のために、電話やFAX、WEB環境などをフル活用しています。言葉では伝えるのが難しい皮膚の状態も、写真や動画で医師に診てもらえば、安心です。
他職種ともこまめに情報交換を行うことで、よりよいケアが提供できます。そのために普段から顔の見える関係づくり、お互いの専門性を尊重したコミュニケーションを心掛けており、地域の研修会や集まりにも積極的に参加しています。

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